科学一般

コロンブスの卵 1

北海道大学低温科学研究所

みどり

北海道大学の中央道路,現在の総合博物館(旧理学部)の少し北側に「人工雪誕生の地」という石碑が建っています。中谷宇吉郎が世界で初めて人工雪の制作に成功した地です。昔はそこに低温科学研究所がありました。1960年台の半ばに「低温」は,もっと北の方,重要文化財札幌農学校第二農場モデルバーン)の隣に移っています。

人工雪誕生の地 石碑

あ,今の低温獣医学部の隣でもありますよね。ハムテルとか漆原教授とかが徘徊していたあたりですかね。

あきな
みどり

あれは一応「H大学」ですよ。

去年の東京オリンピックでは真ん前がマラソンコースになってたわね。北大に入ってすぐ,俗に七曲りと言われる難所で,レースの鍵になると言われていたところです。七曲りを通って中央道路クラーク像を経て道庁の方に向かうコースでした。それも三周したからね。

七曲りとかクラークとか,まるで周期表を覚えてるみたい。周期表コースですね。

あきな
みどり

ところで,中谷宇吉郎は寺田寅彦の教え子なのよ。寺田といえば夏目漱石の第五高等学校の教え子で門下生よね。寺田寅彦は随筆が有名でしょ。実は中谷宇吉郎も結構随筆を書いてます。漱石の「吾輩は猫である」に出てくる水島寒月や「三四郎」に出てくる野々宮宗八という科学者は寺田寅彦がモデルと言われているんだけど,その辺のことは中谷の随筆に詳しく書いてあるわ。

雪は天から送られた手紙である。 ですね。

あきな
みどり

夏目漱石がロンドンでかなり精神状態が悪化していた頃,池田菊苗を紹介されたのよ。漱石は菊苗を自分の下宿に住まわせて,毎日様々なことについて語り合ったそうよ。菊苗は何にでも博学で,特に哲学に関しては漱石は全く歯が立たなかったとか。その中で菊苗は盛んに漱石に作家になることを勧めたといいます。後に作家になったのは菊苗のおかげかもしれないわね。寺田寅彦にも絶対菊苗に会うよう勧める手紙を書いてます。

池田菊苗ってあのグルタミン酸ナトリウム味の素)の人ですか?

あきな
みどり

そうよ。本人はグルタミン酸を「具留多味酸」と書いていたらしいわね。
本職は物理化学の教授だけどね。

立春の卵

みどり

ところで,中谷に「立春の卵」という随筆があるんだけど,読んだことある?

コロンブスの卵に関する話なんだけど。

いえ,読んだことはないです。

コロンブスの卵ですか。どんなに素晴らしいアイデアや発見も、一度知られてしまえばとても単純あるいは簡単に見えるってことですよね。

先生,実は,私も卵立てられますよ。

あきな
みどり

えっ,ホント

テレビでマジシャンがやってたんです。種明かしは,あらかじめ机に塩を少し撒いておくこと。

あきな
みどり

ああ,なるほどね。塩なら見てる人にはわからないものね。

コロンブスの卵 2 へと続く

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