科学一般

コロンブスの卵 2

立春の卵

コロンブスの卵 1 より

で,その立春の卵という随筆はどんな話なんですか?

あきな
みどり

この話の発端は,中国のニューヨーク総領事が中国の古書に「立春には卵が立つ」と書いてあるのに気がついたのよ。で,実際に立春の時間に立ててみると,ニューヨークでも上海でも立ったというわけ。
日本でも中央気象台に科学者が集まって実験した結果立った。札幌でも立った。というわけで,立春に卵が立つというのは事実らしい。

立春ってどういう日でしたっけ。

あきな
みどり

二十四節気の一つよ。一年で一番昼が長い日が夏至,短い日が冬至。その中間が春分秋分。

春分秋分は昼と夜の長さが同じ日ですね。

あきな
みどり

あら,違うわよ。昼のほうが14分くらい長い。いろいろ理由はあるんだけど大きいのは,一つは大気による屈折で少し太陽が上に見えること(2分20秒),もう一つは,気象庁による昼の定義が,太陽が少しでも地上に出たら日出,完全に沈んだら日没となっているため,それぞれ太陽の半径分長くなる(1分5秒)。
春分と秋分は昼のほうが長いというのははクイズのイロハよ。

はぁ,そうだったんですか。知りませんでした。

で,立春は?

あきな
みどり

二十四節気夏至,秋分,冬至,春分の間を六等分しています。立春冬至から数えて三番目。つまり冬至と春分のど真ん中に位置しています。

七十二候というのもあるわよ。二十四節気さらに三等分して,概ね5日ごとに分けています。
スマホのアプリで 72 Seasons というのがあって,英語の解説がついています。面白いので興味ある方はどうぞ。

コロンブスの卵

で,なぜ立春には卵が立つのですか?

あきな
みどり

卵が立春だということを理解しているとは思えないわよね。中谷は「春さえ立つのだから卵ぐらい立ってもよかろうということになるかもしれない。しかしアメリカの卵はそんなことを知っているわけはなかろう」と書いてます(笑)。
気象台の説明では「寒いと中味の密度が濃くなって重心が下るから立つので、何も立春のその時間だけ立つのではない」だそう。
またどこかの大学の学部長か誰かの説明では、卵の内部が流動体であることが一つの理由であろうという。

で,中谷は,もう立春は過ぎているが,卵が立つかどうか確かめてみたわけ。何分かはかかるけど,ちゃんと立てることができたゆで卵にして熱いままでも立てることができた
つまり寒さも流動体も関係ないわけ。立春だろうが立春でなかろうが,卵というのは常に立つものだったのよ。

で,当然,それを読んだ,少年の頃の私,もとい,少女の頃の私もやってみました。

もといって,一体いつの時代の人ですか。で,どうだったんですか?

あきな
みどり

何分かはかかるけど,見事に立ちましたよ。

私の見解では,卵って表面がザラザラしてるでしょ。無数のくぼみがある。だから丹念に探せば,重心に乗る平面が必ず見つけられるんだと思うのよ。

で,この話の面白いところは,コロンブスの時代以来500年間,人類の誰もが,試してもみないで「卵は立たない」と信じ続けてきたことなのよ。コロンブスの卵という逸話があるおかげでそう思い込んでいた,ということもあるかもしれない。やろうとしても5分や10分かかるので,立たないと思っていると多分途中でやめちゃうと思う。だけど立つんだとわかっていれば何分かかってもやり遂げることができる。これって例えば体操の技なんかもいい例だと思うのよ。
塚原光男が初めて「ムーンサルト(昔は月面宙返りと言っていた)」をやったときは世界が驚愕した。でも一度やれるということがわかると誰でもやれるようになる。今じゃ子供でもやってる。
ビールマンスピンもそうね。始めて見たときは驚いたけど,今は誰でもやってるわよね。初めてやる人は大変だけどね。

新しいことを思いつくと,「自分でも思いついたんだから,世界の中にも同じことを思いついた人がいるはずだ」と思っちゃう。ま,大抵はそうなんだけど,意外と人類の盲点エアポケットに入っている場合もあると思いますよ。

コロンブスの卵が,どんなに素晴らしいアイデアや発見も、一度知られてしまえばとても単純あるいは簡単に見えることだってことで始まったけど,意味は違うけど全く同じ結論になってしまいましたね。

あきな

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