ベンジャミン・リベットの実験
「我々に自由意志はあるのか」ってどういう意味ですか?
私だって高校は自分で決めたし,自由意志なんてあるに決まってるじゃないですか。
まあ,普通そう思うわよね。ところが 1983 年の有名な実験があってね。今日はその話をしようと思う。まず被験者に自分の好きなタイミングで手を上げてもらうのよ。
この時,「本人の意識」としては
① 自分が手を上げようと決めた時
② 自分の手が動いたのを認識した時
の2つがあるわよね。一方「脳の中」では
③ 手を上げる準備を開始した時
④ 手を上げる司令を出した時
の2つがある。でそのタイミングを調べてみたわけ。どういう順番になると思う?
そりゃ ① → ③ → ④ → ② じゃないですか。まず手を動かそうと決めて(①),脳が準備をして(③),脳が司令を出して(④),手が動いてそれを感じる(②),以外有り得ないじゃないですか。
それがどういう結果になったかというと,③ → ① → ② → ④ という順番だったのよ。
まず脳が準備を開始して(③),その後手を動かそうと決めて(①),手が動いたと感じて(②),その後で脳が手を動かせと指令を出す(④)。
えーっ !! いろいろと順番がおかしいです。
そう。だから世界に衝撃を与えた,有名な実験なのよ。人間に「自由意志」など存在せず、脳が決定を下したのちにそれが「自分の意志」として意識にのぼる,というのだから。脳内のニューロン発火が、われわれの動作のほとんどを決めてしまうことになる。
サルトルが亡くなったのは,この実験の3年半前だからこの結果を知らずに亡くなって,ある意味よかったのかもしれないわね。
サルトル?
〽 ソ,ソ,ソクラテスかプラトンか。ニ,ニ,ニーチェかサルトルか。みんな悩んで大きくなった。(でっかいわぁ,大物よ)俺もお前も大物だぁ!!! って言うでしょ? トントンとんがらしの宙返り
何ですか?それ。
サルトルが生きていてこの論文を読んだら,びっくりして,ひっくり返ってドン,てなことになってしまう(かもね)
わけのわからないことばかり言うのやめてください。
自由否定(free won't)
話を元に戻すと,リベットは自由意志がないとは言っていないのよ。この論文の数年後に行った実験の結果,自由意志(free will)はないかもしれないけど,それを否定する,キャンセルする自由,自由否定(free won't)は残っている,と。
脳で自発的に準備が始まって,その後自分の意志が発生するわけだけど,その間にキャンセルできる時間があるはずだ,というわけ。ただその実験はちょっと曖昧な点もあって,自由否定ができるのかどうかは結論が出ていなかったのよ。
最近の実験でそれに関する面白い論文が発表されているので,次にその話をするわね。