共通テスト終わりましたね。生物難しかったって先輩が落ち込んでました。
生物の第2問に霊長類の2色型色覚,3色型色覚が出てましたね。
「生物の色覚の進化 2」を読んでた受験生はバッチリでしたね。
このブログ,受験生必読ですね。
おそらくこれからもいっぱい出題されると思いますよ。
コペンハーゲン解釈
そこはまあ今盛んに研究されているところで,現段階ではわからないとしかいえません。後でその辺りに関してはもう少し詳しくお話しします。
コペンハーゲン解釈(標準解釈)では,観測されていない状態では,確率を示す波が広がっており,観測されるとその波束が収束して,一つの測定値を示す,とされています。そしてその測定値は確率的にしかわからないのです。
量子力学の成立
さて,1926 年,エルヴィン・シュレーディンガー( Erwin Schrödinger )はド・ブロイの物質波の考え方を基にして,量子力学の基礎方程式である,シュレーディンガー方程式(波動方程式)を完成させ,波動力学を提唱します。シュレーディンガーは,「電子は実際の空間に雲のように広がって,全体で1つの実体となっている波だ」と考えたのです。電子雲の図をみたことがあるでしょう。
その前年,コペンハーゲン学派の一人であるヴェルナー・ハイゼンベルク( Werner Heisenberg )は,行列を用いた行列力学を提唱します。ハイゼンベルクは,「波は実際の空間に広がっているわけではなく,あるエネルギーのかたまりが,ある範囲内のどこかに確率に従ってランダムに現れるものであり,それが電子である」と考えました。彼らの解釈では,量子が波動性を示しているときは,1つの量子が複数の状態にあり,それぞれの存在確率で同時に重ね合わさっている,と考えます。そしてそれが観測されることによって,1点に収束し,粒子性を示す,というのです。
波動力学と行列力学は,数学的に同等であることがわかっています。
後に,リチャード・ファインマン( Richard Feynman )が経路積分を用いた量子力学を完成させます。ファインマンは,「粒子があらゆる経路を同時に通る」と考えました。A地点からB地点まで,直線でいく経路,ジグザグでいく経路,地球を一周していく経路,など可能な経路は全て実現していると考えるのです。その値を全て足し合わせると,量子の,ある場所における存在確率は,波動力学や行列力学で計算される確率と完全に一致します。従って,これも数学的に全く同等です。
これらは,同じ現象を,異なった角度から見ているだけで,どれも正しいのです。
ファインマンって,あの「ご冗談でしょう、ファインマンさん」シリーズのファインマンさんですか?
あのシリーズは面白いですね。
そうね。あの本は誰にでも薦められる本ですね。
ファインマンは魚介類が苦手で全く食べられなかったのだけど,日本では魚が新鮮で食べられたのね。で,アメリカに帰ってまた食べてみたら,やっぱりダメだったとか。(笑)
それにしてもド・ブロイとか,シュレーディンガーとかハイゼンベルクとか,なんか名前がカッコイイですね。
なんか,量子力学の謎めいた雰囲気とピッタリだなあ。
さて,シュレーディンガー方程式で,厳密に解が解けるのは水素類似原子しかありません。その解を示してみましょう。
ただし, \( n \) は主量子数、 \( l \) は方位量子数、 \( m \) は磁気量子数を表します。
\begin{split}
u_{n,l,m}(r,\theta,\psi)=
-(-1)^{\frac{(m+\left| m \right|)}{2}}\left( \frac{2}{na} \right)^{\frac{3}{2}}
\frac{1}{\sqrt{2\pi}}
\left[ \frac{2l+1}{2}
\frac{(l-\left| m \right|)!}{(l+\left| m \right|)!}
\frac{(n-l-1)!}{2n\left[ (n+l)! \right]^3}
\right]^{\frac{1}{2}}\\
\phantom{a}\\
\times \left( \frac{2\rho}{n} \right)^le^{-\frac{\rho}{n}}
L_{n+l}{}^{2l+1}
\left( \frac{2\rho}{n} \right)
P_l{}^{\left| m \right|}(\cos\theta)e^{im\psi}
\end{split}
はあ,これが水素原子の電子の振る舞いを表す式ですかぁ。なんか,すごいですね。
アインシュタイン vs コペンハーゲン学派
さて,標準解釈(コペンハーゲン解釈)には,どうしても納得がいかない人物がいました。あのアインシュタインです。彼は「月は私が見ている時だけ存在しているというのか」とか「神はサイコロを振らないと信じる」と言ったと言われています。観測していない状態では確率の波として広がっており,観測することによって一点に収束し,それは確率的にしか分からない,というのは彼にはどうしても納得がいかなかったのです。
私も納得がいきません。アインシュタインと同じ考えだわ。
波動方程式は常に実験結果を正しく予測します。確率的にしか予測できないけれど,それは常に実験結果と一致していました。
アインシュタインは,量子力学が確率的にしか予測できないのは,今の量子力学が不完全なためであると考えました。それを「隠れた変数」と呼びました。完成された量子力学なら,粒子は確定した物理量を持っていて,確率的にではなく,完全に予測できると考えていました。
アインシュタインはコペンハーゲン学派に対し,次々と疑問点を提示し,コペンハーゲン学派がそれに対して答えを出すということを繰り返しました。それによって量子力学は鍛えられていきました。
EPRパラドックス(Einstein–Podolsky–Rosen paradox)
中でもとりわけ難問だったのがポドルスキー,ローゼンとアインシュタインが 1935 年に提出したEPRパラドックスです。
ここではオリジナルではなく,後のデヴィッド・ボームによる変種で説明します。
スピン0の静止した素粒子が崩壊して,2個の粒子,電子と陽電子が放出されたと考えます。運動量保存の法則により,最初運動量が0でしたから,二つの粒子(仮にAとBとします)は 180 度反対の方向に向かって飛んでいきます。ある程度離れたところで(札幌と沖縄でもいいし,月と地球でもいいし,銀河系とアンドロメダ星雲でもいい)A粒子の,例えばZ軸方向のスピンを測定します。標準解釈によれば,観測されるまでは,例えば↑スピンと↓スピンの重ね合わせた状態にあり,スピンの方向は定まっていないはずです。しかし測定することにより一つに,例えば↑に決まります。するとその瞬間に,角運動量保存の法則により,Bのスピンはその反対方向,↓に決まります。
アインシュタインは相対性理論により,宇宙には光より速いものは存在しないのだからこれは矛盾している,と主張したのです。アインシュタインはこのことを「不気味な遠隔作用」と呼びました。
なるほどー。それは確かに気持ち悪い話ですね。流石アインシュタイン。
この両方の粒子が未確定の状態で離れていて(例えば銀河系とアンドロメダ星雲),片方が観測された瞬間にもう一つの粒子の物理量が確定する,という関係を「量子もつれ(量子エンタングルメント:Quantum entanglement )といいます。この量子もつれは,今話題の量子コンピュータや量子通信,量子テレポーテーションなどに応用されています。
おお,量子コンピュータがこんなところに顔を出してくるんですか。
量子もつれ? なんかどっかで聞いたことがあるような?
以前,量子もつれが生物の磁気センサーになっているかも,という話をした時でしょう。
科学におけるOSINT 2(生物における磁気センサー)
さて,アインシュタインと同じく標準解釈に納得がいかない大物物理学者がいました。次にその話をしましょう。
「量子力学の世界(観測問題を中心に)3」へと続く